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    MP3プレーヤー

    デジタルオーディオプレーヤー(digital audio player、DAP)とは、デジタル音楽ファイルを再生可能なオーディオプレイヤーで、特に携帯が可能なものをさす。このうち、MP3プレーヤーはMP3のみ再生可能、あるいは MP3の再生に対応したプレーヤーを意味する。

    概要

    デジタルオーディオプレーヤーはデジタル方式の音楽ファイルを再生する音響機器で、携帯電話会社の音楽配信サービスやインターネットの音楽販売サイトから購入したり、CDなどから直接取り込んだ音楽ファイルを再生するのに用いられる。 デジタルオーディオプレーヤーという言葉は、文字どおりには1980年代に登場したCDプレーヤーや1990年代に登場したMD(ミニディスク)プレーヤーなども含まれるが、この言葉は通常、2000年代に本格的に普及しはじめた記録媒体にフラッシュメモリや小型ハードディスクを使用した音楽プレーヤーを指す。デジタルオーディオプレーヤーという用語が広く使用され始めたのは2000年代半ばからである。 2000年代前半までは音楽ファイルのMPEGによる音声圧縮形式方式としてMP3ファイルが使用されることが多く、MP3プレーヤーという呼称が広く用いられたジャンルであるが、著作権保護などの観点から暗号化技術が進み、MP3以外の形式の採用が進んだ。MP3以外の圧縮形式として、WMA、AAC、ATRAC、Vorbisなどのコーデックを使用する機種が出現し、2000年代半ば頃からデジタルオーディオプレーヤーという呼称が用いられるようになった。一方、近年はCDプレーヤーやMDプレーヤーにも、CDやMD本来のコーデックのほかにMP3を使えるものが現れている。

    製品ごとの特色

    メーカーごとに様々な製品が発売され差別化戦略の競争が激しい分野であることから、製品の機能にはいくつかのバリエーションがあり、単に音声ファイルの再生だけでなく、多彩な機能をもつ機種もある。たとえば、ラジオ受信機能、ラジオや外部入力の音声を録音する機能、USBメモリのような外部ストレージとしても利用できる機能、語学学習などに用いる再生速度調整機能、FMトランスミッター機能などが挙げられる。 また、類似の製品としてICレコーダーがある。ICレコーダーは主に会議や講演などの音声の録音を目的とし、再生面では余り音質は重視しないものが中心で、再生品質を重視する音響機器としてのデジタルオーディオプレーヤーとの違いが見られる。一方、本格的な音響機器として生録や再生を重視したものも出現しており、デジタルオーディオプレーヤーとの境界が曖昧な製品もある。 現在では携帯可能なオーディオプレーヤーとして携帯電話でも音楽再生機能を備えるものが増えており、携帯電話が普及している地域を中心として携帯電話をオーディオプレーヤー代わりに利用する人は多い。特に日本では、音楽ファイルのダウンロード市場は、PCよりも携帯電話の方がボリュームとしては大きい。 デジタルオーディオプレーヤー以外にも、やや大型の液晶ディスプレイを搭載し、音楽再生に加えて、フォトビューワー(デジタル写真の閲覧)や映像ファイルの再生を行うなど、より多機能化したプレーヤーもあり、こちらはデジタルメディアプレーヤーと呼ばれる。

    仕組み

    デジタルオーディオプレーヤーは、音楽ファイルを記録する記録媒体、複数のファイルを管理するファイルシステム、音楽ファイルを再生(デコード)するデコーダー、音声を出力するアンプ、操作ボタンなどの操作系、バッテリにより構成される。 ほとんどの機種では液晶パネルなどの表示装置を搭載しており、再生中の楽曲タイトルやアルバム名などの情報を表示することができる。低価格機種の中には表示装置を持たないものもある。 記録媒体にはフラッシュメモリまたはハードディスクドライブを使用する。フラッシュメモリを使用する機器では、プレーヤーにメモリを内蔵するタイプと、SDカードなどのメモリカードを使用するタイプがある。ハードディスクではごく一部を除いて機器に内蔵するタイプとなる。2009年12月時点で、フラッシュメモリ内蔵タイプは主に小容量(〜64GB)、ハードディスク内蔵タイプは主に大容量(80GB〜)を中心に展開されている。 音楽ファイルを管理するファイルシステムでは、古くは独自のファイルシステムを使用し、データの書き込みに専用アプリケーションソフトウェアを利用するものが多かった。近年では特定の環境(OS、管理アプリケーション)に依存せずに使えるUSBマスストレージクラスに対応し、FAT16やFAT32等のパソコンで広く利用される汎用ファイルシステムを採用する機種が一般的である。

    2006年頃のデジタルオーディオプレーヤーでは、音楽ファイルの転送方法により

    1. 専用の転送ソフトでのみ転送可能なもの
    2. 専用ソフトを必要とせず、エクスプローラなどのファイル管理ツールからファイルが転送できるもの(マスストレージ型と呼ばれる)

    の大きく2種類に分けられる。操作性に大きく影響する部分であり、仕組みの違いにより混乱しやすい部分である。

    iPod、ウォークマン、SD-Audio、Gigabeatなどは前者に属し、著作権保護のため転送したファイルには暗号化などの保護処理が行われる。このタイプのプレーヤーは、特定のパソコン用アプリケーション(たとえばiTunesなど)の専用周辺機器と考えるとわかり易く、使用には必ずパソコンと専用ソフトが必要になる。また、保護処理を行っているのでプレーヤーに転送したファイルは、MP3などのファイルも含めて、通常、プレーヤーから取り出すことができないようになっている。したがって、プレーヤーに転送したからといってむやみにパソコン上にある音楽ファイルを削除してはならない。また、暗号化するため転送に時間がかかりやすく、転送ソフトの負荷も大きい。 後者のタイプのプレーヤーは、MP3ファイルや、DRMを施していないWMAなどのファイルをUSBストレージの普通のデータファイルとして格納する。特定のアプリケーションの周辺機器ではないので、FATファイルシステムで特殊な処理なしにファイルの転送が可能な機器であればパソコンを必要としない利点がある。また、USBストレージにある音楽ファイルを再生可能なUSBホスト機能をもつアンプ、ミニコンポ、ラジカセ、メディアプレーヤー、ポータブルDVDプレーヤーなどの機器に接続して、これらの機器のリモコンなどからの再生も可能である。 後者のタイプのプレーヤーは、音楽販売サイトから買ってきたDRM処理のほどこされた音楽ファイルは、転送しても暗号化された意味不明なデータファイルのためプレーヤーが正常に再生できない。このため前者と後者の両方の特性をもつプレーヤーも存在する。MP3ファイルやDRM処理されていないWMA ファイルは通常のデータファイルとしてエクスプローラからも転送可能で、DRM処理されたファイルのみWMPなどのソフトから転送する。2006年秋頃ではシャープ、ビクター、ケンウッドなどのプレーヤーの一部の機種に見られる。 USBマスストレージクラスにも対応することで、接続するだけで外部ストレージ(記憶媒体)として認識するものもみられる。後者のタイプのプレーヤーはこの機能をもつ。前者のタイプのプレーヤーでもUSBストレージとして使用できるものもあるが、音楽ファイルを普通のファイルとして転送してもプレーヤーが認識せず、音楽ファイルは再生できない。それゆえ、前者のタイプで異なるメーカーのプレーヤーを併用する場合は、楽曲をそれぞれの専用ソフト・それぞれの暗号化されたファイル形式で多重管理することになってしまう。また、異なるメーカーのプレーヤーに乗り換える場合、暗号化された楽曲ファイルは乗り換え先に持ち出せない可能性が高い(フリーソフトをいくつか併用すれば可能な場合もある)。その点、後者のタイプであれば、複数の異なるメーカーのプレーヤーを併用したり、乗り換えたりすることが容易である。

    利用方法

    これらの機器は主に、コンパクトディスクやカセットテープ・MDなどといった媒体からパソコンなどを使ってファイルに変換するリッピングと呼ばれる作業を行い、その上でできあがったファイルをパソコンに接続・書き込んで利用する。 また近年では、歌謡曲や洋楽・懐メロ・クラシック音楽・民謡・民族音楽など幅広く取り揃えたダウンロード販売などのサイトを利用する形で、インターネットで購入した音楽ファイルを書き込んで利用する人も多く、後述するようにiPodなどはこのダウンロード販売とセットにして扱いやすくすることでシェアを伸ばした。2005年頃よりはポッドキャスティングの形で、最新歌謡曲やヒットソングから落語までといった様々な有償・無償のサービスが展開されている。 このほかにも街角やコンビニエンスストアに設置された情報端末から直接音楽データを購入できるサービスも始まっている。その他には多機能化機種では、内蔵されたラジオからの録音・再生にも対応している製品もある。 音楽CD数十〜数百枚にも匹敵する内部記憶装置の大容量化といった事情に伴い、プレイリストの指定といった形で、その時の気分で優先して再生する音楽を選べる機能を持つものも多い。曲に関する様々な情報が記載された画面を見ながら選曲できるなど、従来の携帯音楽プレーヤーには無い様々な利便性を供えている。この中には歌詞テキストファイルや写真(デジタル画像)の表示といった付加価値を持つ製品も見られる。 電源は内蔵二次電池(専用アダプターによる充電式)と乾電池を使うタイプの2種類がある。前者ではパソコンそのものを充電器として利用できるほか、外付けバッテリーが利用できるタイプの物もある。後者では、乾電池を使う一般的な機器に比べると消費電力がやや大きいこともあって、これ以外の音楽プレーヤーに比べると電池切れが早い製品も少なくない。ニッケル・水素蓄電池のような高機能蓄電池も利用できるが、主な乾電池型二次電池の電圧が、乾電池の1.5Vに対して1.2Vと低い為、使用するプレーヤーによっては、プレーヤーの電池残量計が早めに電池切れと判断し、乾電池を使用した時よりも電池の持ちが悪くなる事がある。 2000年代半ばのプレーヤーでは、USBからの給電を前提にしてACアダプタを付属しないものもある。通常、パソコンのUSB端子を利用するが、充電のためだけにパソコンを起動しなければならないなどの欠点もある。これを補うものとして、ACコンセントからUSBの電力だけを供給できるアダプタや、同様にUSBの電力供給が可能な携帯式のバッテリパックなどのグッズが出現している。 ただし、対象外の機器で充電されるのを嫌い、専用の充電器かパソコンのUSBからの充電でも、デバイスとして認識されている状態でないと充電しない機種もある。 音声入力をもたないカーオーディオ機器などでデジタルオーディオプレーヤーの音楽を聴けるように、FMトランスミッターを内蔵するプレーヤーもある。また、外付け用のFMトランスミッターも多く発売されている。これは、再生音声をFMラジオの電波で飛ばすもので、FMラジオをもつカーオーディオやラジカセ・ミニコンポで受信して聴くことができる。室内でも、手元にプレーヤーを置き、わずらわしいケーブル配線などをせずにワイヤレスで室内の離れたところに設置された音響機器で再生するといった使い方ができる。 またカーオーディオ分野においても、デジタルオーディオ対応プレーヤーの増加が見られる。古くはCD-Rに焼き付けたMP3再生にのみ対応していたが、次第に各種フォーマットにも対応してきた。さらに、近年のDVD普及により、音楽ファイルを焼き付けたDVD-R等を再生できる機種も、JVCから登場したほか、音楽CDを自動的にリッピングして内蔵ハードディスクに保存する機能を持つものもある。また、USBメモリ用のコネクタ付きモデル、 iPod専用コネクタ付きモデルも登場。年々対応機種は増加している。なお、いずれの機種も年々価格が下落しており、自動車の標準装備となる日も近いとする意見もある。 さらに近年では、Bluetoothに対応したデジタルオーディオプレーヤーも登場した。Bluetooth対応のヘッドホンやオーディオ機器と組み合わせて、ワイヤレスで音楽等を楽しむことができる。Bluetoothを内蔵するプレーヤーは少数であるが、外付け用の Bluetoothトランスミッターも多く発売されており、トランスミッターを介することでBluetoothに対応できる機種は数多く発売されている。

    歴史

    初期の携帯型オーディオプレーヤーは1979年に登場したウォークマンに代表されるアナログカセットテープベースのものであり、CD発売後も価格や媒体の大きさなどからテープの置き換えには至らなかった。8cmCDが出るも、容量の少なさや、プレーヤーの小型化技術が発達していなかったことがネックになっていた。また、CDは1997年頃まではユーザーが自作できる環境が整っておらず、ユーザーの好みの曲だけ集めたアルバムを作ることが困難だった。 このため、よりコンパクトで、携帯機器にふさわしい簡易なメカニズムで、書き込みや書き換えが容易なシステムの登場が待たれていた。1980年代後半に高度な高能率符号化による圧縮技術の開発が進み、1992年にはミニディスクとデジタルコンパクトカセットが登場している。また、動画のパッケージメディアおよび伝送のためにMPEG1が1993年に規格化されたが、その音声部分の符号化方式としてつくられたMPEG Audio(Layer1〜3)の普及が期待されるようになった。 同じころ不揮発性メモリの本命となったフラッシュメモリが実用化され普及が始まっていた。当初はMPEGオーディオコーデックと組み合わせ、放送機器など業務用のオーディオ記録再生装置に使用されていたが、1995年ころから「シリコンオーディオ」「ソリッドオーディオ」などの名称で携帯型の試作品が発表された。LSIの高密度化によって、コンシューマ製品に導入されるのは目前に迫っていた。 日本では韓国サムスン系のセハン情報システムズ社が1998年2月に世界で初めて発売した「mpman」の輸入販売を嚆矢とする。当時、内蔵メモリー64 MBモデルの価格が53,000円で、特許ライセンスの関係でMP3エンコーダーは付属しておらず、自前で用意する必要があった。この機器は多くの好事家の興味を引き、雑誌などで盛んに紹介されたものの、高価格と入手難、マイナーメーカーの製品であること、なによりも当時すでに問題になっていた違法コピーのイメージから来る胡散臭さとあいまって、広く知られるまでには至らなかった。 同年5月には、SolidAudioという携帯プレーヤーをNTTと神戸製鋼所が共同で開発中であると発表された。このSolidAudioはTwinVQという NTTが開発した独自の圧縮フォーマットを採用しており、著作権の管理機構と専用の販売ルートを持つ、今日のITunes Music Storeに似たコンセプトの機器だった。しかしTwinVQにのみ対応するSolidAudioは、その利便性の悪さ等が原因となり、あまり普及せずに終わっている。こうした状況を受け、その後、日立マクセルや富士フイルムAXIA等から次々とTwinVQ以外のMP3やWMAといった、広く使われている圧縮形式にも対応する後期 SolidAudio(AXIA ZeroCORE等)が発売され、現在のMP3プレーヤーの先駆けとなった。 そして、後述の裁判の影響で発売が伸び、1998年のボーナス商戦にかろうじて間に合ったダイヤモンドマルチメディア社のRio PMP300が発売される事となる。容量は内蔵32 MBに加え、スマートメディアで増設が可能だった。当時オープン価格で発売されたが、各店舗の実質的な販売価格は2万7800円だった。 この時期はWindows98およびMMX ペンティアムの普及拡大期と重なる。しかしエンコードには未だ再生時間の数倍の時間がかかっていた。当時の市場ではUSBは標準装備され普及していたものの、まだ技術的に十分成熟しておらず一般的なインターフェイスではなかったため、この時期のプレーヤーの内蔵メモリーへのデータ転送にはパラレルポートを用いるものが一般的だった。 アメリカにおいては、Eiger Labs F10という容量32 MBの製品が1998年夏ごろ登場しているが、普及には至っていない。同年9月にDiamond Multimedia社は、買収した韓国DIGITALCAST社(mpmanの共同開発企業)の製品を元にしたRio PMP300を発表したが、全米レコード協会(RIAA)から違法コピーを助長するとして販売差し止め請求が裁判所に提訴された。結果的にこの請求は米連邦地裁によって却下され、RIOはクリスマス商戦に間に合うように発売され(199US$)、大きな成功を収める。 PMP300にはCDからのリッピングとエンコードを行うJukebox MP3というソフトウェアが付属していた。 1999 年になると、USBへの対応を強化したWindows98 Second Editionが発売された。これに合わせるかのように、DiamondはRioをバージョンアップさせた"Rio500"を発売。Rio500は、11 Mbpsで転送可能なUSBをサポートして、1曲の転送時間を5秒前後にまで押さえ込み、メモリーも内蔵64 MB(スマートメディアで拡張可能)を搭載した。当時流行していたスケルトン調のデザインや、Windows/Mac問わず利用できる点、実際のオーディオ機器に近づいたシンプルなインターフェース、ジョグダイアルによる快適な操作性などから高く評価され、ヒット商品となった。未完成な点は多かったものの、コンシュマー向け製品としての問題が解決され、初めての実用的なMP3プレーヤーだったと言えよう。Rio500ではMP3プレーヤーの歴史上初めて"DIGITAL AUDIO PLAYER"の文字が液晶下に刻まれている。 またRio500はAudibleという語学コンテンツ向けフォーマットにも対応しており、音楽だけではないMP3プレーヤーの可能性を開拓。楽曲配信サービスRioport.comにも対応しており、現在のiTunes Music Storeのようなサービスが受けられたものの、当時の通信インフラ(56 kbpsアナログモデムが主流)や普及率などの問題があり、展開が早すぎたため失敗した。 この様に、初期の機器がMP3フォーマットの音楽再生用機器として発売された歴史的経緯から、MP3プレーヤーという名称が今日まで使用されている。しかし、その後に独自技術で参入する企業が多かったこともあって、現在の携帯圧縮音楽再生機器は複数の圧縮フォーマットが再生可能となっており、 MP3プレーヤーという言葉は実態に即しておらず、必ずしも正しくない。より正確を期すならデジタルオーディオプレーヤーが相応であろう。

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